将棋もコリドールも同じ仲間?二人零和有限確定完全情報ゲームとは

将棋や囲碁やオセロは二人零和有限確定完全情報ゲームと呼ばれる仲間です。長くていかめしい名前ですが分けてみると中身は単純です。このサイトのボードゲーム、ブロックコリドー(コリドールと同じルール)を例に1つずつ見ていきます。

文:なおすけ / 公開 / 更新

ブロックコリドーのルール

このサイトのブロックコリドーは、ボードゲームのコリドール(1997年にフランスのGigamic社から出たもの)と同じルールの対戦ゲームです。

  • 9×9マスの盤の手前の辺から、向こうの辺を目指してコマを進める
  • 手番では「コマを1マス動かす(相手のコマが隣なら跳び越せる)」か「壁を1枚置く」のどちらかをする。壁は1人10枚でマス2つ分の長さ
  • 壁は越えられないので、置かれると遠回りしなければならない。ただしどちらかの道を完全にふさぐ壁は置けない
  • 先に向こうの辺に着いたほうの勝ち

運の要素はなく、盤の上のことは全部見えています。この性質が今回の話の中心です。

名前を5つに分ける

二人零和有限確定完全情報ゲームは5つの言葉をつなげたものです。

二人
遊ぶのは2人。3人以上だと、2人が組んで1人を攻めるといった駆け引きが入ってきて話が変わります。
零和
一方が勝てばもう一方が負ける。2人の得と損を足すとゼロになるという意味です。2人とも得をする結果がない勝負です。
有限
どんな進め方をしても、いつかは必ず終わる。
確定
サイコロやカードの引きのような運がない。同じ手を指せば必ず同じ結果になる。
完全情報
ゲームに関わる情報が全部見えている。相手の手札や秘密の数字のような隠れた情報がなく、相手が何をしたかもすべて分かる。

将棋・囲碁・オセロ・チェスはどれもこの5つを満たします(同じ局面のくり返しを止める決まりも含めて。この話はあとで出てきます)。

似た呼び名

長い名前なので、ふだんは一部だけを取った呼び方や、近い意味の言葉もよく使われます。

  • ゼロサムゲーム(零和ゲーム): 零和の部分だけを取った言い方。ゲームの外でも「経済はゼロサムではない」のように、誰かの得がそのまま誰かの損になるかどうかを言うときによく使われます
  • 完全情報ゲーム: 後ろの部分だけを取った言い方。隠れた情報がないことを言いたいときに使います。反対は不完全情報ゲームで、ポーカーやこのサイトのワードウルフがその仲間です
  • アブストラクトゲーム: ボードゲームの分野で、運がなく盤の上が全部見えている対戦ゲームをまとめて呼ぶ言い方。物語や絵の設定がなく、ルールの仕組みだけで遊ぶゲームという意味合いです。厳密には同じ範囲ではなく、3人以上で遊ぶものも入ります
  • 組合せゲーム: 数学でこの種類のゲームを調べる分野の名前(組合せゲーム理論)。2人が交互に指し、運も隠れた情報もないゲームを扱います

ほかのゲームと比べる

このサイトのほかのゲームはどこかの条件が欠けています。

ゲーム二人零和有限確定完全
情報
皇帝と奴隷○○○○✕
ヒット&ブロー○○△○✕
危ない橋✕—△✕✕
美人投票✕—○○✕
ブロックコリドー
(4 人)
✕—○○○
ブロックコリドー
(2 人)
○○○○○

○ 満たす・× 満たさない・△ 進め方によっては満たさない・— 3 人以上で遊ぶので当てはめない

  • 皇帝と奴隷: 相手の手札が見えず、カードを同時に出すので完全情報ではない
  • ヒット&ブロー: 相手の秘密の数字が見えない。外れのコールを続ければいつまでも終わらないので有限は △
  • 危ない橋: 2〜6 人で遊び、サイコロを振る。出た目は自分にしか見えない。ポイント制は目標点に届くまで続くので有限は △
  • 美人投票: 3 人以上で、数字を同時に出す
  • ブロックコリドー(4 人): 4 人で遊ぶので二人ではない
  • ブロックコリドー(2 人): 有限は手数の上限があるから(次の節)

いちばん多いのは完全情報が欠けているゲームです。相手の手札や数字が見えないから、相手が何を考えているかを読む楽しさが生まれます。 皇帝と奴隷のようにお互いが同時にカードを出すゲームも、相手の手を見てから決められないので完全情報ではありません。

ブロックコリドーは2人で遊ぶときだけ5つ全部を満たします。4人で遊ぶと二人の条件が外れ、誰を止めるかという3人以上ならではの駆け引きが入ってきます。 ただしブロックコリドーにも1つだけ落とし穴があります。

「有限」の落とし穴

ブロックコリドーの元になったコリドールは、コマを前にも後ろにも動かせます。お互いがコマを行ったり来たりさせれば、対戦はいつまでも終わりません。つまりもとのルールのままでは有限とは言い切れないのです。

これは理屈だけの話ではありません。コリドールを小さな盤で計算した解析では、縦8×横3の盤で1人3枚の壁という設定のとき、両者が最善を尽くすと左右に行ったり来たりし続けるしかないことが分かっています。 どちらかがその往復をやめると相手に勝ち筋を与えてしまうからです。

そこでこのサイトのブロックコリドーでは、合わせて200手(1人100手)で決着しなければ引き分けにしています。この決まりを入れてはじめて、どんな進め方でも必ず終わる有限のゲームになります。

将棋にも同じ役目の決まりがあります。同じ局面が4回現れたら千日手として指し直すルールです。数えるのは手数ではなく局面なので、行ったり来たりの2手でも30手かけて一周するループでも同じように止まります。局面の数には限りがあるので、指し続ければどこかで同じ局面に4回たどり着き、将棋は必ず終わります。終わらない勝負を終わらせる決まりは、完全情報のゲームではよく出てくる工夫です。

答えは決まっている、でもまだ誰も知らない

5つの条件を満たすゲームには大事な性質があります。両者が最善を尽くしたときの結果が、最初の1手を指す前から決まっていることです。 先手必勝か後手必勝か引き分けのどれかになります。運も隠れた情報もないので、すべての手を最後まで調べれば答えが出るからです。

実際に答えが出たゲームもあります。チェッカーは2007年に、両者が最善なら引き分けになると示されました。8×8のオセロも2023年に引き分けになるという研究が発表されています。

コリドールはまだです。9×9の盤では壁の置き方だけでおよそ10の20乗通り(1億の1億倍のさらに1万倍)あると見積もられていて、全部を調べるのは今のところ無理です。

小さな盤なら答えが出ています。5×5の盤では、解析した範囲で1人の壁が4枚以下なら後手必勝、5枚以上なら先手必勝でした。壁の枚数が変わるだけで、勝てるのが先手か後手かが入れ替わるわけです。 9×9で1人10枚の本物のコリドールがどちらに転ぶのかは、まだ誰にも分かりません。

実際に遊んでみる

答えが決まっているといっても、人間どうしの対戦でそれを知る人はいません。どこに壁を置くか、いつ壁を使い切るか。読み合いで勝ち負けが変わるのは将棋と同じです。

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