なぜ嘘の意味にだまされる?たほいやの心理

でっち上げたはずの意味に、なぜか本物より票が集まる。たほいやで人がだまされるのは、中身より「書き方」に反応しているからかもしれません。

文:なおすけ / 公開 / 更新

たほいやとは

辞書から誰も知らない言葉を1つ選び、その意味をみんなででっち上げます。本物の意味と嘘の意味を並べて、どれが本物かを当てるゲームです。 自分の嘘に票が入れば得点、本物を見抜けても得点。

「たほいや」という名前も、辞書に載っている珍しい言葉です。『デジタル大辞泉』(小学館)によると、意味は「静岡県などで、イノシシなどを追うための番小屋」。 同じ辞書には2つ目の意味として、この遊びそのものも載っています。

日本では、1993年にフジテレビの深夜番組『たほいや』で取り上げられて広まりました。英語圏にも「フィクショナリー(Fictionary)」というほぼ同じ遊びがあり、 辞書さえあればどこでも遊べる言葉遊びとして昔から親しまれています。

本物らしさは書き方で決まる

人は、すらすら読めるものほど「本当らしい」と感じやすいことが知られています。このすらすら読める度合いを、心理学では「処理流暢性」と呼びます。 同じ文でも、背景とのコントラストが高い読みやすい色で示したほうが正しいと判断されやすい、という実験結果もあります(Reber と Schwarz、1999年)。

たほいやで効くのも、中身より形です。辞書の説明文(語釈)には決まった型があります。

  • 「〜の一種」「〜すること」「〜をいう」で終わる
  • 「中世に」「東北地方で」のように、時代や地域が添えてある
  • 感想や補足がなく、淡々としている

この型に沿って書かれていると、読んだ人は中身を吟味する前に「辞書っぽい」と感じます。逆に、どんなにもっともらしい内容でも 「〜みたいな意味だと思う」のような話し言葉が混ざると、それだけで嘘だとばれます。

辞書の側もこのことを分かっています。『デジタル大辞泉』の「たほいや」の項には、誰もが知っている言葉をあえてお題にして、 いかにも辞書らしい書き方を競う楽しみ方まで紹介されています。中身より書き方で勝負できるのが、このゲームなのです。

本物のほうが変わっている

たほいやのお題になるのは、ふだん誰も使わない言葉です。そういう言葉の本物の意味は、特定の道具の名前だったり、ある地方だけの風習だったりと、 たいてい思いもよらない方向に具体的です。

そのため、慣れてくると「普通すぎる意味は嘘っぽい」と感じる人が出てきます。すると今度は、わざと妙に具体的な嘘を書く人が現れます。 たほいやの面白さは、こうして「本物っぽさ」の基準そのものが、場の中でずれていくところにあります。

だませる嘘の書き方

  • 辞書の型に合わせる。言い切りの文で、30〜50字くらいに収めます。長すぎる説明は、かえって作り話に見えます。
  • 読みからの連想は、ひとひねりする。言葉の響きから真っ先に思いつく意味は、ほかの人も書きます。同じ方向の嘘が並ぶと、どちらも疑われやすくなります。
  • 具体的なひと言を足す。「〜に使う道具」だけより、「漁で網を干すのに使う道具」のほうが本物に見えます。 裁判の証言を使った実験でも、事件と関係のない細かいことまで覚えている証人ほど信用された、という結果があります(Bell と Loftus、1989年)。 ただし細かすぎると作り話っぽくなるので、足すのは1か所だけにしておくのがおすすめです。

見抜く側のコツ

  • 言葉の読みと意味が、うまく合いすぎていないか。響きから想像しやすい意味は、誰かが連想で書いた嘘かもしれません。
  • 書いた人のくせ。何ラウンドか遊ぶと、人ごとの言い回しのくせが見えてきます。その人らしい書き方の選択肢は、たいてい嘘です。
  • だまそうとしていない文を探す。本物は、だまそうという意図が入っていない文です。「うまく書けているか」ではなく「誰かが工夫した跡があるか」を見るつもりで読むと、見え方が変わります。

このサイトのたほいやでは、本物とほぼ同じ意味を書いた回答は、AI が判定して選択肢から外します (書いた人には +3点)。本物そっくりの答えが残ると、その2つのどちらかを選ぶだけの二択になってしまうからです。 残るのは「本物ではないのに、本物に見える」嘘だけ。だます側の腕がそのまま出るようにしています。

実際に遊んでみる

お題も AI が用意するので、辞書も進行役もいりません。URL を送るだけで、3〜10人ですぐに遊べます。

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