なぜ「ウミガメのスープ」?水平思考クイズの名前の由来と歴史

出題者が不思議な出来事を話し、はいかいいえで答えられる質問だけで真相を当てる遊びがあります。日本ではウミガメのスープと呼ばれていますが、もともとの名前ではありません。なぜスープなのか、なぜウミガメなのか。名前の由来と、この遊びが日本に広まるまでをたどります。

文:なおすけ / 公開 / 更新

どんな遊びか

遊び方はとても単純です。

  • 出題者だけが真相を知っている短い話を出す。たいてい「なぜそうなったのか」が分からない不思議な出来事
  • ほかの人は「はい」か「いいえ」で答えられる質問をする。出題者は「はい」「いいえ」「どちらとも言えない」「関係ありません」のどれかで答える
  • 答えを重ねて真相を言い当てたら終わり

名前のもとになった問題はこんな話です。

ある男が海の見えるレストランでウミガメのスープを頼んだ。ひと口飲んだところで手を止め、店の人に「これは本当にウミガメのスープですか」とたずねた。本物だと聞いた男は店を出て、家に帰ってから死を選んだ。なぜだろう。

この話だけでは手がかりがほとんどありません。「男はスープがまずかった?」「いいえ」「男は前にもウミガメのスープを飲んだことがある?」「はい」のように質問を重ねるうちに、話の裏にある出来事が少しずつ見えてきます。

真相を読む(ネタばれ)

男は昔、船が遭難して仲間と漂流したことがありました。食べるものが尽きて仲間の1人が亡くなり、男はほかの仲間から「ウミガメのスープだ」と言われたものを飲んで生き延びます。何十年もたって本物のウミガメのスープを飲んだとき、味がまるで違うことに気づき、あのとき飲んだものが何だったのかを悟ったのです。

名前の由来

この遊びの一般的な呼び名はシチュエーションパズルや水平思考パズルです。英語では lateral thinking puzzle と呼ばれます。 日本でウミガメのスープと呼ばれるのは、1冊の本の題名から来ています。

きっかけは英国のパズル作家ポール・スローンです。スローンは1991年に水平思考パズルの問題集を出し、この形の謎解きを広めた1人として知られています。 その2作目の Challenging Lateral Thinking Puzzles(1992年)が、2004年に日本で『ポール・スローンのウミガメのスープ』という題で翻訳されました。

原題にウミガメもスープも出てきません。日本語版の題名は本に載っている問題の名前からつけられたものでした。 この本を入り口に遊びが知られるようになり、問題の名前だった「ウミガメのスープ」が遊びそのものの名前として広まっていきます。 ひとつの問題の名前がジャンルの名前になったわけです。

ちなみに英語圏では同じ筋の話がアホウドリのスープとして知られています。2011年に出た名作選の題名は Hall of Fame Lateral Thinking Puzzles: Albatross Soup and Dozens of Other Classics。 英語圏で代表になったのはアホウドリ、日本で代表になったのはウミガメでした。中国語圏でもこの遊びは海亀湯(ウミガメのスープ)と呼ばれています。

水平思考という言葉

水平思考(lateral thinking)はマルタ出身の思考法の研究者エドワード・デボノが作った言葉です。1967年の著書 The Use of Lateral Thinking で提唱しました。

デボノはふだんの考え方を垂直思考と呼びました。前提を積み上げて1本の筋を深く掘っていく考え方です。 それに対して水平思考は、掘っている穴そのものを疑って別の場所に穴を掘る考え方です。

ウミガメのスープで言えば「スープに毒が入っていた」「店で何かが起きた」と店の中だけを掘っていても真相には届きません。 「この男の過去に何かあったのでは」と穴を掘る場所を変えたときに、話がつながります。水平思考パズルという名前はこの考え方から来ています。

日本で広まるまで

本が出るよりずっと前に、日本でこの話を見た人はたくさんいました。1991年12月5日放送のテレビドラマ『世にも奇妙な物語』に「海亀のスープ」という1話があります。 作家の景山民夫さんのエッセイで紹介された話が原案と言われ、日本でこの話が知られた早い例のひとつです。 ただしこのときはドラマで、みんなで質問して当てる遊びとしてではありませんでした。

遊びとして広まったのはインターネットからです。2000年代には掲示板で出題者がお題を出し、ほかの人が質問を書き込んで真相に迫る遊び方が広まりました。 文字で1問ずつやり取りする形は、はいかいいえで答えるこの遊びとよく合っていました。 2004年の本が出たこともあって「ウミガメのスープ」という呼び名が決まっていき、ネットで出題された問題が本になることもありました。

今は通話しながら遊んだり、配信で視聴者が質問を投げたりと、遊ぶ場所が広がっています。 道具がいらず出題者が1人いればすぐ始められる手軽さが、30年以上たっても遊ばれ続けている理由でしょう。

実際に遊んでみる

この遊びでいちばん困るのは出題者です。真相を知っている人が1人いないと始められず、その人は推理に参加できません。 このサイトのAI水平思考クイズではAIが出題者になります。1人でも好きなときに、はいかいいえの質問を重ねて真相を当てられます。

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